ワイズマン・ファウンドリー(Weissman Foundry、以下「WF」)は、バブソン大学(Babson College)やオーリン工科大学(Olin College of Engineering)、ウェルズリー大学(Wellesley College)の学生であれば自由に利用できるデザインスタジオで、学生はWFで提供されているプログラムを受講することもできます。WFでは、アントレプレナーシップやテクノロジー、リベラルアーツなど、多様な専門性を持った向上心のある学生の交流促進を目的としています。

WFは”scouts”(スカウト)と呼ばれる学生たちが主体となって運営しています。スカウトは地域の3つの大学から各10人ずつで構成されており、WFはバブソン大学の学生以外でも利用することができます。3つの大学それぞれから平等にスカウトを選出することで、私たちは管理スタッフとして、学生たちが優劣なく、お互いに尊重し合えるような環境作りに努めています。ただ、地理的な問題として、WFはバブソン大学のキャンパス内にあり、オーリンはすぐ隣にあるのですが、ウェルズリー大学が比較的遠方にあります。そのため、どのようにウェルズリー大学の学生をスタジオに連れてくるのか、移動上の課題を解決する必要がありました。ウェルズリーの学生がキャンパスから当スタジオまで通えるように、ライドシェアサービスのLyftを利用したこともありますが、費用が高くあまり良い方法ではありませんでした。

学生に対して当スタジオを周知し、注目してもらう取り組みの一つとなっているのが、私たちが毎年開催しているファッションショーです。個人としてもビジネスの一領域としても、ファッションに関心を持つ学生は多いため、スタジオでショーを実施することで、より多くの学生にスタジオを知ってもらう絶好の機会となっています。このように多数の学生を巻き込み興味を引きつけるようなイベントの開催は、組織間のコラボレーションや領域横断的で最先端の学習体験を目指す私たちのようなスタジオにとって、成功のカギとなります。また、木工や金属加工、3Dプリントやレーザーカッター、テキスタイルなど、特定のテーマに沿ったワークショップやプログラムも実施しています。

これらのワークショップやプログラムはスカウトが運営しています。各スカウトは最低一つの分野の専門知識を持っており――ただし、実際には多くのスカウトが複数の分野の専門知識を持っています――どのようなプログラムをどの順番で提供すべきかなどを、スカウトたちの間で話し合います。今年は、各スカウトが自分の専門外であっても少なくともプログラムの説明はできるように、全スカウトが全てのワークショップやプログラムを担当するという新しいやり方を試しています。先ほどお話したファッションショーも、スカウトが出したアイディアをもとにしています。

スタジオに所属する教員として一番心がけているのは、オープンで親しみやすく、協力的なメイカースペース文化を醸成することです。3つの大学ですでに実施・提供していることと重複するものは、意図的に避けています。例えば、オーリンにはファブスペースやメイカースペースがありますが、それらは正規の授業のための施設で、バブソン大学やウェルズリー大学の学生がオーリンの施設を使う場合は、必ずオーリンの学生と一緒に作業する必要があります。一方、WFは誰でも歓迎します。例えば、ウェルズリーの学生だけでもスタジオを利用できるのです。

メイカ―スペース文化の醸成は、施設や3Dプリンターのようなハードウェアだけでなし得るものではありません。それよりも様々な活動や、学生にとって存在感を持つことで実現できると考えています。そのため、ここではできる限りルールを設けず、学生が好きなようにスタジオを利用できるようにしています。これは、学生間のセレンディピティを促進することにつながります。例えば、ある学生がプロジェクトに取り組む中で、技術面で専門家のアドバイスを求めているときに、オーリンの学生がスタジオで何かを製作しているのを発見し、会話が始まり、協力し始める。こういったことを、私たちはこのスタジオで実現していきたいと考えています。