現在のお仕事や人事のミッションを教えてください。

米村:

 昨年から「未来創造プログラムHIRAMEKI」という新規事業提案制度を開始しました。新規事業を自ら考えた社員が、自ら取り組みたいという思いを実現するための制度で、当社の社員であれば誰でも応募ができます。

まずは提案資料を人事部に直接送付します。昨年度は210件の応募がありました。その中から21件(21名)を選考し、その21名はコンサルティング会社のアドバイスを受けながら、提案資料をブラッシュアップしていきます。そして、さらに5名が選考され、最終的に社長をはじめとした役員の前でプレゼンテーションを行います。

その結果、検討プロジェクトが発足し、提案した本人がそのプロジェクトに配属されます。昨年度の応募メンバーから今年度3名が配属されました。

ビジネスプランを立てたことのない社員が、コンサルティング会社の方に伴走していただきながらマーケティングや収支計画を含めたプランを作成していくという観点、そして、キャリア形成は自分の実力で行うことができるというメッセージを発した点において、人事部がプログラム事務局を行っている意義があると思います。

矢野:

 「未来創造プログラムHIRAMEKI」によって、「夢を描いていいんだ」「夢を実現することができるんだ」という意識づけはある程度できたと考えており、社員のキャリア形成に寄与している部分はあると思います。

 あらかじめ決められた社員それぞれの使命はありつつも、前述のような可能性があってもいい。未経験の領域に挑戦する風土づくりができたのではないかと思っています。

 弊社の経営者も、「夢みる力」というキーワードをあげています。目標がないとモチベーションが上がらないというのは、みんな思っているのではないでしょうか。

会社発足以来、いろいろと挑戦しており、実は失敗もたくさんしています。その失敗経験があったからこそ、九州新幹線・博多駅ビルの開業、上場などが実現できたと思っている社員は多い。「未来創造プログラムHIRAMEKI」で小さな挑戦を重ね、失敗があってもいい。その上に社員の成長・会社の成長があると思います。

10年後15年後に御社の中核を担う人材は、どういったスキルや知識、マインドセットを持つべきか、人事の方々の中でお考えがあれば教えてください。

矢野:

 「誰かが困っていることを解決する」課題解決力も必要な能力だと思いますが、それだけではなく、課題そのものを作る能力というのも必要だと思います。課題形成力や課題創出力というのかもしれません。「誰も困ってないけど、こういうのがあると世の中が変わるのではないか」と描ける人材、つまり「夢みる力」を持った人材が必要だと思います。例えば「ななつ星in九州」ももともとは存在していなかった市場を形成したと思います。当時は寝台特急のニーズが縮小していた時期でしたが、「ななつ星in九州」の走っている九州、それが社員たちの目標となり、夢となり、実現にこぎつけたのだと思います。それが九州のブランドになり、地方創生の好事例として評価されています。

新しい価値を提案するというのはデザインの大きな醍醐味で、「ななつ星in九州」も一つの価値を提案しているんですよね。企画をやり抜くアントレプレナーシップ、採算性というビジネス、そのどれが欠けても成り立たない。私どもの教育方針と非常に親和性が高いと感じました。