今のお仕事の内容について教えてください。

経営企画とICT戦略室、西鉄グループ横断でデジタル化を推進するデジタルソリューション推進委員会、そしてグループ事業部といって、バスや鉄道といった大きな事業部に直接ひもづかない小売などのグループ会社をとりまとめて経営管理する仕事をしています。

特に醍醐味となるところは?

今年から第12次中期経営計画が始動していて、昨年はその計画を練っていました。まだ一息つけるわけではありませんが、それでも、これをしっかりやっていけば何か見えてくるのではという、良い経営計画を立てるところまではこぎつけられました。その意味では手応えを感じています。

逆に、今後課題となってくるのは?

デジタル戦略と、それを推進するための人材の確保・育成。計画として盛り込むことはできたのですが、それをこれから実際にどういった形で実現していくのか。手応えと表裏一体の課題です。

その課題をクリアしていく上で、いわゆる経営資源の中で鍵となるのは?

”人”に尽きます。人口減少社会といわれますが、だからこそ多様な人材を活用することが必要になります。幸い、新卒にせよ中途にせよ、当社には大変優秀な方が応募してきてくださいます。その中でも、この人は何か違いを生み出してくれそうだという人、特に現場を切り盛りする課長、係長クラスのポジションに就いたとき、自分でこういった方向に仕事を進めたい、これをやりたいんだというアイディアを出せる人に活躍してもらうことが課題ですね。

今はどんどん社会が変化していますので、そういった変化を受容し、対応できる会社にしていかないといけない。しかし、上の世代がその変化を全部追えているかというと、必ずしもそうではないんですよ。だからこそ、最前線にいる人間が思いを持ってアイディアを作り、それをロジカルに表現して上長を納得させる、それが必要です。

そこで必要になるスキルとは?

論理性と共感を引き出す力。これが何より重要です。デジタルやテクノロジーについては、必ずしも専門家でなくていい。会社の外に各分野のプロフェッショナルがいらっしゃるわけですから。ただし、そうしたプロフェッショナルの方々と連携する、同じ目線で一つのことに取り組めるだけの知識は必要でしょうね。それは仕事上のスキルだけではなく、これからは多様な人とともに仕事をすることが増えていきます。その意味では、学生のうちから、外国人の方やLGBTの方も関係なく、いろんな人と一緒になって何かに取り組んだ経験を積んでいる人は大変魅力的ですね。

加えて申し上げますと、仕事を始めて、いきなり自分のアイデアを社会にぶつけて、ということは現実問題なかなかありません。やはり若手のうちはいろんな人の話を聞いて、意見交換したり、ときには挫折したりということが多いわけです。その中で、困難に直面しても前に進もうとする。うまくいかないんだけれど、でも、どうすればうまくいくだろうと試行錯誤して、なんとか突破口を見つける。その突破口を見つけた瞬間が、その人が成長した瞬間なんです。泥臭くあがけるか、失敗するかもしれない場面でリスクが取れるか、そしてもし失敗したとしても、そこから学びを得て次につなげられるか、というのは非常に大きな要素になると思います。

より遠くを見据え、10年、20年後に活躍している人材のイメージとは?

今、企業で中核になっている人のイメージではいけないと思います。今、評価が高い人というのは、仕事をきっちりこなす、責任感がある、規律性が高い。そういう人はもちろん重要です。しかし、これからはイノベーションを自らデザインしていかなければならない。そうしたときには規律ではなく自律、特に自らビジョンを打ち出す力が必須です。ビジョンメイキングというのが、今はまだ弱いんですよね。現状の改善ではなく、「これからの社会ってこうなっていくだろう」というところから逆算してビジョンを作り、そしてそれを普通の人にも分かるように伝えてくれる。その意味では、自分と相手それぞれの立場を考えて、それを踏まえた上で話をできなければいけません。独りよがりにならずに周りも巻き込んでいける、両方兼ね備えたケースというのはなかなか稀でしょうが、だからこそ、そんな人がこれからは求められるようになります。