現在の人材育成上の課題について教えてください。

弊社では、社員資格に応じた「階層別研修」を実施しています。いくつかの階層がありますが、今回は中堅クラスと、その上のチームリーダークラスの研修から見えてきたことについて、お話します。

昨年、その2つの階層の研修の受講者本人とその上司に、受講者本人の強みと弱みを回答してもらい、集計・分析したところ、それぞれの階層における共通点が浮かび上がってきました。まず共通の強みとして「感受性」があり、その他にも中堅クラスでは「付加価値志向性・判断力」など、チームリーダークラスでは「交渉力・利害調整力」などが強みとして見られました。一方、弱みとして、中堅クラスでは「リーダーシップ・全体感・交渉力」など、チームリーダークラスでは「長期構想力・全体感・ビジョンメイキング」などが見られました。

それぞれの階層で役割が異なるため、強み・弱みから見える受講者本人の課題は当然違いますが、私が共通して課題と捉えたのは、「上司の仕事の任せ方」でした。上司が部下に対し、各人のレベルより少し難易度の高い仕事にチャレンジできる環境を整え、仕事を付与することによって、先ほどあげた各階層での課題はクリアできると想定できます。

しかし、どうしても目先の業務に追われてしまい、結果として、時間軸が短い仕事やその階層に応じた仕事の付与となってしまいがちです。じっくりと考え、長期的に構想を練って推進する。そういった仕事や役割を適切に付与する、上司の「役割付与力」を高める必要があると感じています。

— 長期構想力や全体感、ビジョンメイキングが不足しているのですか。デザインはまさに未来をどう作るかという未来構想や、新しい価値をどう提案していくかといったところの教育に力を入れています。そういうスキルや知識を持つ学生を育成できると考えています。

学生のときにそういったことを学ぶ機会があれば、本当に素晴らしいと思います。しかし、社会に入り、納期の短い仕事をしたり、集中して目の前の業務を推進したりしていると、徐々に視座が下がってしまいがちです。この点は解決する必要がありますね。

長期構想やビジョンを作る仕事は、経営企画の方が主に担当されているのでしょうか?

そういうわけではありません。それぞれの事業部の中にも事業計画を策定する部署があります。また、社員全員がそれぞれ担当する仕事の中で、長期的なビジョンの視点から今、何ができるのかを逆算して日々の業務を推進しています。

どういった人材を採用したいと考えられていますか?

成功体験・強い意志・チームワーク力を持っている人は強いと思います。成功体験は、学業・アルバイト・部活など、どんな取り組みでも、何かをやり遂げた経験を持つ人はやはり強いと感じます。そして、「意志」も強く意識しています。

弊社の中期計画である「TOTO WILL 2022」にも、WILL(意志)というキーワードが含まれています。
強い意志を持って挑戦すれば、たとえ失敗したとしても次に繋がるものが必ず得られます。そのため、「どうしたらいいですか」ではなくて、具体的に「こういうことをしたい」「こういう未来を創りたいから、こういう取り組みをしてきた」と語れる方と一緒に働きたいと思っています。

また、理系の学生であれば、研究に一人もしくは少人数で取り組む機会も多いと思いますが、仕事は「チーム」で推進していくものです。そのため、チームワークを実践できる「人財」が望ましいです。
※TOTOでは、社員は財産であるという考えより「人財」と表記しています。

我々の考えている新専攻に対して、御社として期待することがあれば教えてください。

企業活動においては、インプットはもちろん大事ですが、それ以上に実践してアウトプットを出すことが非常に重要です。その重要性をぜひ学生時代から学んでほしいと考えています。ただ学んで知識として留めておくのではなく、インプットしたものを活用して、アウトプットとして成果を出さないと意味がない。そのことを、学生の皆さんに理解いただくのはすごく大事なことだと思っています。

ビジネスモデルをデザインできる人財の育成・輩出という新専攻開設の趣旨には、非常に関心があります。ビジネス全体を俯瞰して物事を捉え、個々の情報や事象をつなぎ合わせて今までにない新しい価値を生み出し、提案する。そんな素晴らしい人財を育成する取り組みに、大いに期待しています。

※TOTOでは、社員は財産であるという考えより「人財」と表記しています。