Product Development Project(PdP)についてご説明いただけますか?

PdPは Aalto universityのコースで、工学研究科に設置されています。本コースはプロダクト開発に関するコースですが、プロダクトデザイン以上に学際的な分野が他にあるかどうか分かりません。私たちはデザインやビジネスだけでなく、電気や機械、コンピュータサイエンスといった分野出身の学生を求めています。そのため、本コースをそういった分野の学生に周知し、興味を持ってもらう必要があると考えています。

加えて、他のスクールや研究機関の学生も本コースに在籍しています。アアルト大学だけでなく、ラップランド大学(University of Lapland)や、ヘルシンキのHAMKHäme応用科学大学(Häme University of Applied Sciences)の学生もいます。アアルトの正規学生ではない、国外からの参加者も多くいます。韓国や米国、ブラジル など母国の所属機関から直接来ています。

チームビルディングはどのようにされていますか?学生がそれぞれ行うのでしょうか、または教員が手伝うのでしょうか?

私たちがチームビルディングを手伝います。どのチームも、一定の基本的な基準を満たさなくてはなりません。各チームには、自発的なリーダーやデザインマネジャー、そして私たちが「ビジネス・シャーク」と呼ぶ、ビジネス志向型の人が必要です。加えて、各チームは機械工学や電子工学、コーディング等の分野で適切なスキルを有していなくてはなりません。これらは、全てのチームが満たすべき基本的な基準です。私たちは学生がチームメイトを見つけられるようサポートはしますが、彼らが自分でやるべきことであるのは変わりません。

チームの編成は、なかなか混沌として辛いプロセスです。それでも、「これがあなたのチームです」「あなたはあのチームに行きなさい」と命令はしたくないのです。こうしたやり方は私たちらしくありません。私たちは、どのようにチームビルディングを行うべきかのルールを与えるにすぎず、最終的な責任は彼らにあります。

PdPには何社くらいのパートナーがいますか?どのようにパートナーを見つけるのでしょうか?

パートナー探しは大変ですが、すでに120社以上のパートナーがいるという点は助かっています。PdPがどんなものか知っている企業が多いため、アプローチする際にゼロから説明する必要がありません。

企業パートナーと実施するプロジェクトの場合、IP(知的財産)が発生する可能性があります。PdPの一環として生じたIPはどのように扱っていますか?

私たちの方針は非常にシンプルです。プロトタイプや報告書、権利などは全てスポンサーに帰属させます。例として、あるエレベーター企業と進行中のプロジェクトがありますが、全ての権利が先方に帰属することになります。もし学生が何か新しい発明をした場合、その旨を通知することで、その企業の社員と同等の処遇を受けることになります。つまり、発明の報償金の対象となり、発明が特許化された場合は特許報償金を受け取ることができます。特許には発明者として学生の名前が載ります。このシステムは学生からは高く評価されています。

基本的に、デザインファクトリーの各コースは、デザインとビジネス、アントレプレナーシップに関する基礎的スキルの学習を提供するものではないのですね?

様々なコースが多数あり、一般化するのは難しいのですが、PdPを例とすれば、PdPはエンジニアリングやデザイン、ビジネスなどの基礎を提供していません。本コースに登録する学生は、大学院に進学時点ですでに何かしらの専門性を獲得済みであると想定しています。つまり、コース登録時点でその分野のスキルを獲得しているはずなのです。そのため、主な学習目標は、プロジェクトの実習、デザインの仕方や実現方法、プロジェクトやプロダクトの開発、実践の場における適切なプロダクト開発メソッドやツールの活用といった、他の側面に関連したものとなります。

あなたの研究分野に関するキーワードで、興味深いトピックはありますか?

今、興味を持っていることの一つは、リモートでの協働です。我々は世界中に広がり、距離が隔てられている状況で、協働作業をどのように向上できるかという点です。スカイプはとてもよく使われているツールですが、スカイプもいわば高度な電話の一種ですよね。声が聞こえて、顔が見える。でも、写真を見つつ、声が聞こえる場合はどうでしょう。あまり大差ないですよね。ですから私は、スカイプよりもさらに高度な、別のシステムの可能性について興味を持っているのです。

今、德久さんと私がしているように、まず一度直接会うことが非常に重要だとよく言われます。その後でそちらから何か追加で質問があれば、または逆にこちらから何か必要なものがあった場合、送っていただけばよいわけです。チームメイトとすでに対面したことがあれば、協働作業はより容易になります。

こうした状況はPdPにもあります。留学生がこちらの学生に初めて会った後に帰国すると、「スカイプなどがあるとずっとやりやすい」と言います。リモートでの協働は決して簡単なことではありませんが、やりやすくはなります。

ユーザー間のコミュニケーションを促進する発明は、すでに多くありますよね。

例えば、本学においてカフェテリアは非常に重要な存在です。その重要性から、特別な名前までついています。コーヒー(coffee)とオフィス(office)を組み合わせて、「coffice」と呼んでいます。ここにコーヒーマシンを設置しているのですが、方針の一環として1つの建物に1台のコーヒーマシンしか置いていません。よくオフィスにあるような小型のコーヒーマシンは、ここでは厳しく禁止されています。あくまでこの1台だけなのです。人々の交流を促す、とてもシンプルなツールとして役立っています。

あとは、「ハグポイント」というものもあります。そこへ行って、ぜひハグをしてきてください。