御社で重視している新卒採用の人材像や人材の素養を教えてください。

新規採用のベースとして打ち出しているのは、いろいろなことを吸収するための素養である、物事を素直に見ることができて、真面目に行動することができる人材です。当社の長所の一つとしては、真面目な人材が非常に多いということがあげられます。これは決して悪いことではないのですが、一面からすれば尖った人材、はみ出た人材が少ないということになります。そのため、尖った人材やはみ出た人材が常にほしいと私は言っています。

ただし、尖った人材といっても、当社の手の平から大きくはみ出る人はダメだよ、とも言っています。しかし実態としては、先鋭的に尖っていて、こぼれ落ちそうな人は当社をあまり受けに来ません。ITとか商社、外資に行くことが多いのでしょう。また、あまりにも尖っている人は、当社では受け止めきれないかもしれません。ですから、みんなの中で「ちょっと変わってるな」くらいが良くて、「すごく変わってる」となると難しい。でも、これからはそういう人材も活用していかなくてはならない。当社も変わっていかねばなりません。

今キッコーマンに必要なのは、突破力や行動力がある人材です。もちろん実力のある、地道で真面目、素直な人材はいっぱいいます。そういう人材も必要ですが、リーダーシップを発揮しながら突破力を持ち、行動力がある人がまだまだ少ない。強いリーダーシップで組織を率い、変化を捉え失敗を恐れない人材がほしい。そして、そういう人材を活かすためには、リーダーをサポートするフォロワーが重要だと思っています。強いリーダの意を汲み、一つ一つ体現していく。そして二人三脚で組織を強くしていくことがあるべき姿でしょうか。新卒採用では、強いリーダーシップを“持っている可能性がある人材”を意識的に採りたいと考えています。

目標に向かって粘り強く行動を続ける、周囲を巻き込むところは、アントレプレナーシップで強調している能力です。

新プログラムに期待したいのは、デザインという特殊能力を自分の強みとして構築し、そういう強みを磨きに磨いて、そこで尖ってほしいということですね。それを活かしながら、ビジネスにおけるチーム戦の中でやれるような人材を育成していくことは面白いと思います。会社で活かせる得意分野を持った広い視野、コミュニケーション能力を持った人材がほしいです。

10年後20年後に御社の中核を担うようになるためには、どのような知識、スキル、マインドセットが必要でしょうか?

まずはイノベーションを起こす人材が必要です。イノベーションを起こせるのは、やはり高度な知識やスキルを持った人材だと思います。先ほど表現した“尖った人材”もそうですが、あえて付け加えるならば、祖業を超えるくらいの事業を作り上げられる人材であると考えます。それは、キッコーマンでは醬油です。祖業は重要で、これを伸ばすことも大切な役目ですが、これを超えるような事業を展開できる人材ですね。当社は、今まで食と健康を追求してきています。これは素晴らしいことなので今後も続けますが、「キッコーマンは食と健康とあとは何か?」と自分で提案して事業として実現させられるようなパワーと知識、感性を持っている、そういう人材がこれからほしいです。

今のままずっと変化もなく続けていくということは、事業にとっていいかといえばノーです。絶対変わらなくてはならない。豆乳事業はM&Aで取り入れて、今は当社の主要な事業になっています。醬油は、海外は伸びていますが国内市場は縮小しています。国内外で競争も激化しています。2017年に100周年を迎え、これから200年、300年と続いていくためには、違う柱を作る、それが食と健康の分野であってもいいし、グループ全体としてそこから離れてもいいわけです。ただ社会的に意義がある事業を起こせるような、需要創造ができる人材がこれからはほしいですね。そのためには、知識・見識やスキル、人間力、こういうところは必要だと思っています。

人間力というのは、人を巻き込むために必要じゃないですか。スペシャリストとプロフェッショナルという言葉はよく使っていて、スペシャリストはその分野では素晴らしい人ですが、どちらかというと周囲を巻き込むことよりも自分中心にものごとを進めてしまう人と定義しています。例えば、素人に専門用語を駆使して説明してしまう、とか。それに対し、プロフェッショナルは同じことをやっても、相手に分かる言葉で伝えて、相手を巻き込み職務を遂行しお金をもらっている人です。これからの時代は、そういうプロフェッショナルを各所で作り、企業力の向上に貢献し、企業を拡大させねばなりません。プロフェッショナルになれる素養を持っている人はウエルカムです。