コンソーシアムの取り組みと、そこでの十河さんの役割について教えてください。

京都大学では、広義のデザインを共通項にして、情報学、機械工学、建築学、経営学、心理学など複数の学問領域を融合させたデザイン学大学院連携プログラム(通称・京都大学デザインスクール)を展開しています。また、そこでの人材育成は大学だけでなく産官学が連携して取り組むべきということで、企業や自治体を巻き込んで京都大学デザインイノベーションコンソーシアムという組織を作っています。私は2019年春まで京大デザインスクールの教員で、コンソーシアムには推進委員会委員長として運営に関わっていました。現在は京都高度技術研究所に所属していますが、コンソーシアムには引き続き副委員長として関わっています。

コンソーシアムの主な活動は?

京大デザインスクールの基礎科目の一部を社会人向けに再編して講義シリーズとして開講したり、毎夏サマーデザインスクールという 3日間の短期集中型アイデアソンをやったり、あるいは企業の経営者をお招きして講演会を開催したりしています。コンソーシアム参画企業の皆様は、それらを受講できるという仕組みですね。幸い、多数の民間組織、企業にご参画をいただいていて、デザインに関する知識やスキル面での成長はもちろんですが、受講生同士あるいは講師とのネットワーク構築という点でも価値をお認めくださっているのかなと思います。

プログラムの内容について教えてください。

大きく分けて、知識系と実践系があり、知識系は、例えば各分野の先生方がオムニバス形式でデザインについてレクチャーし、専門性の高い内容を掘り下げます。実践系は主にワークショップ形式のプログラムです。今までは後者のワークショップ形式のプログラムがほとんどだった中、実験的に昨年度から前者の座学オンリーのレクチャーを始めたのですが、おかげさまで大変人気を博しております。

ワークショップ中心だったところに、座学オンリーのものをあえて加えた意図は?

鋭い質問ですね。ワークショップだとどうしても「結局デザイン学とは何なのか」という理解を深められない、という声があったためです。例えばデザイン学はデザイン思考とよく混同されるのですが、デザイン学は様々なデザイン理論や手法を包含する学問体系です。そこを理解していただくために導入しました。ただ、やはり知識のみで実践しないのでは意味がない。そこのバランスはこれから見極めていかなければならないところです。

京都大学デザインスクール自体は、どのように運営されていますか?

京都大学の情報学、機械工学、建築学、経営学、心理学の各専攻の先生方に、全員ではありませんが、デザイン学の教育に携わっていただいています。デザイン学の専属教員も昨年度まではおりましたが、スクール立ち上げの際に獲得した「博士課程教育リーディングプログラム」の助成金が終了したことで、専属教員はいなくなりました。現在は「京都大学デザインスクール基金」という受け皿を作るなど、より持続的にプログラムを運営していける体制を整えようとしているところです。

デザイン学の科目は、もともと先ほどあげた建築学や心理学などそれぞれの専攻が提供する形をとっていて、各専攻の学生は、いずれの科目でも受講できるようにしています。コンソーシアム参画企業の社員の方々は別で、あくまでもコンソーシアムが提供するプログラムの受講に限られます。

こうした様々な活動の目的は?

人材育成です。複数領域が融合し、コンソーシアムを通じて企業とつながって、オープンイノベーションをして、ではありますが、だからといって例えば起業を目指すわけではありません。起業に関しては、京都大学の場合、別途、産官学連携本部がありますし、iCAPというVC機能も持っていますので、そちらがやる。我々は、デザイン学に軸足を置いて人材を育成していくという役割分担をしています。