現在、取り組まれているお仕事の内容を教えてください。

小原:
会社として意欲的に取り組んでいるのは、福岡市天神エリアにおける再開発促進計画「天神ビッグバン」の第一号案件となる「天神ビジネスセンタープロジェクト(仮称)」です。オフィスを中心に商業施設も入居する大型高層ビルで、第一号案件にふさわしい建築デザインとそれに適合したテナントを誘致することで、福岡の街をさらに活性化させていくというイメージです。ハードとソフトを融合させることで、福岡の発展に寄与していきたいと思っています。

御社のプロジェクトは公共性が高いという特性があると思います。エリアやビルづくりのビジョンは、どのように決められているのでしょうか?

小原:
我々は常に福岡の街の絵を思い描いています。例えば、博多駅前だったらこんなイメージ、天神だったらこんなイメージというのがあって、いろいろな人と議論しながらイメージを作り上げています。例えば、福岡市の髙島市長もよくお使いになられている「エリアマネジメント」という言葉に近いでしょうか。天神はビジネス、博多は「博多旧市街」といわれるような情緒ある町並み、ウォーターフロント地区は海外に開かれた場所など、エリアごとに特性を持たせようというエリアマネジメントの考え方があります。我々も、国内外の洗練された都市計画や魅力的な街並みから想像力やインスピレーションを高めて、開発事業部だけでなく、私も含めて直接は開発事業に携わらない役員や社員一人ひとりが、この街のこの区画はこうあったらいいよね、などといろんな会議の場で話したりします。そこに社長の思いも加わって、このエリアはこうしたい、あのエリアはああしようという意見が出てきます。様々な場面で発信される社長の言葉にみんなの意見が入っていって、それを末端まで腹落ちさせるのが我々の仕事です。それが浸透して、福岡地所としてのエリアの考え方につながっています。

若手社員の意見はどのように反映されるのでしょうか?

小原:
若手の意見は重要視されるんですよ。「街づくりプレゼンテーション」という社内プレゼン大会では、例えば、天神ビジスネスセンターの地下2階や1階に、オフィスのテナントではなく、どんな飲食テナントや商業テナントを誘致したいかをテーマに、ひとり2~3分のプレゼンピッチ大会をします。3〜4時間掛かりますが、50人ぐらいの社員が参加し、社長が直接全員のプレゼンを聞きます。そして、面白いことや良い意見は実際の開発プランに取り入れます。ただ、基本的なコンセプトやベースとなるビジョンと合致してないと、ぐちゃぐちゃになってしまう。そうならないような最低限の整理は丁寧に発信されていて、若手の裁量権や自由度はかなり高いと思います。

その他、若手に対する裁量権をテーマに取り組まれていることはありますか?

中島:
「街づくりプレゼンテーション」がアウトプットとすれば、インプットの「街づくりアカデミー」もあります。主に入社2年目から5年目までの若手社員を対象とした社内研修で、普段は都市開発事業に従事していない者に対して、講義やケーススタディを与え、最後は各自の都市開発事業プランを発表してもらいます。今は1年で20人ぐらい参加しており、用地取得から企画運営まで一気通貫して開発事業を担える人材に育成するため、開発事業部門に在籍していなくてもそういうスキルを身につけさせることを狙いとしています。

本学の新専攻に期待することがあれば、お聞かせください。

小原:
あらゆる分野の知見を一律に具えている人ってあまりいませんよね。会議の席などでは、デザイン系の人、財務系の人、起業マインドの高い人など、一人ひとり得意な分野はあると思うのですが、それらの「いいとこ取り」をすることが大事なのかなと思います。どれだけ激しく議論したとしても、最終的にはベクトルを定めなければ前には進みません。しかし、「いいとこ取り」を目指していけば、小さくまとまることなく、皆の意見やアイディアから素晴らしい化学反応が生み出される可能性があるような気がするのです。自分の意見をロジカルにまとめる能力もさることながら、人々の意見をうまく融合する力、ファシリテーションの能力が必要です。それぞれの領域に関して造詣の深い人がいて、いろいろなコミュニケーションを取っていくことで、皆の意見が掛け合わされます。自分では持っていないけれど、人が持っている知見を活用するというケースもあるでしょう。会議やミーティングを上手に進行し、意思統一を図っていく、それは大事なスキルのような気がします。