まずは、ご経歴を教えてください。

大学ではバイオサイエンスを専攻、その後は外資系コンサルティング会社に入社して、設立して日の浅い戦略グループに新卒で配属されました。そこで経験を積み、6年前にシグマクシスに移ってきました。現在は、IoT&ロボティクスチームのリーダーを務めています。

今のお仕事で、特に醍醐味となるところは?

醍醐味の1つは“未来を描く仕事”が増えてきたことです。最近ではピクチャー・オブ・フューチャーとも呼ばれていますが、5年後10年後のテクノロジーの進展を見通し、どのような社会になってほしいかを描き、それらの実現に向けてどうするのかを考える仕事です。こういった未来を描く取り組みは、多くの企業において不可欠なプロセスであると見ています。

もう1つの醍醐味は、未来を描くだけでなく、実現に携わること、すなわち新しい価値創造に携わることです。従来のコンサルタントは戦略や提案を描くところまでが仕事で、実行はクライアントがやるということが多かったのですが、現在シグマクシスで取り組んでいることの多くは、実行まで主体的に踏み込んでいます。構想段階から必要な人材を集め、例えば、ロボットを開発するのであればハードウェアやAI・ソフトウェアの技術者、現場で活用されるためのインターフェースをデザインできる人材といったメンバーを集めて、価値創造を推進していくような取り組みが多いです。

新しい価値を創造するときに、必要になるスキルや素養とは?

特定の専門領域に閉じこもって、その領域でアウトプットするだけでは、大きな社会課題の解決はできません。様々な領域の専門家と協業できることが重要です。

特に、ロボットというのは、複数の専門領域にまたがる総合格闘技的な分野なので、幅広く様々な分野のエキスパートとある程度深い話ができて、高度なコラボレーションができることが重要となってきます。技術やビジネスの話だけでなく、「人とは何なのか」「働くとは人にとってどんな意味を持つのか」といった哲学的な問いを扱う必要も出てきます。そして、おそらくそれはロボットに限った話ではないはずです。未来を描くことに積極的な企業の方々のお話を伺うと、様々な分野と情報交換をされています。技術者やビジネスマンだけでなく、幅広い学者、例えば文化人類学者や哲学者などと、定期的に対話されているそうです。未来を描くためには、遠い分野の専門家同志が協業できる仕組みやカルチャーが必要だと思います。

いわゆるT型人材とかパイ(Π)型人材といった、1つないし2つの深い専門があって、あとは浅く広くという人材ではなく、例えるならノコギリ型とでもいうのでしょうか。その分野の世界的権威とも腰を据えて話せるくらい、ある程度深い専門性を複数、しかもその深い専門性を離れた領域に持てる人材が理想です。複数の異分野領域に専門性を持つことで、それらを掛け合わせて着想したり、あるいは普通なら出会うことはないような専門家同士をつなぐことのできる人材は、次々にイノベーションを駆動できると思います。

そうした人を育成するには?

自分の専門領域について過剰な守備範囲意識を持たず、あるテーマに対してみんなが積極的にアイディアを出し合えるような文化が重要だと思います。当社でも、誰かが面白い話を拾ってくると、興味を持ったメンバーがわーっと集まってきて、様々な角度から多様な経験や専門性を持ち寄り、熱く議論するんです。気がついたら、そこから新しいプロジェクトが生まれている、なんてことがよくあります。

同時に、コンフォートゾーンを出ることも大事であると思います。気の合う仲間とワイワイガヤガヤやる、ということの一方で、未知の世界や人々と触れ合って、そこで刺激を受ける。自らの行動範囲を広げなければ、知識や能力も広がりません。

また、アイディアで終わらせずに、手を動かして形に落とし込めるスキルも大事です。例えば、ロボット研究開発分野で私が大変感銘を受けた、分身型ロボット「OriHime(オリヒメ)」*の開発者である吉藤健太朗さんは、学生の頃から3Dプリンタを駆使して、いろいろな物を自分で作ってきたと伺っています。

さらに、アイディアを形にしたら、外部の人たちに持ち込んで評価を受けて、ブラッシュアップしていくという行動様式も重要です。この一連のサイクルを、スピード感を持ってグルグル回す経験を続けている人こそが成長し、新しい価値を創造していくのではないかと思います。